質問力―情報を共有し思考力を育むコミュニケーションスキル

コミュニケーション力の一つに「質問力」があります。

日常でも、ふとしたときに質問したり、質問されたりしていますので、「分からないことを明確にするコミュニケーションの一部」くらいの解釈が一般的かもしれません。

実は、質問には、意識的に用いるとさまざまな効果があるのをご存知ですか?質問の「力」を使いこなせるようになると、コミュニケーションの幅がグンと広がり、相手と思いを共有したり、思考力を育てたり、動機付けたりすることができるようになります。

そこで、コミュニケーションにおける質問の目的と効果、その方法についてお話しましょう。

質問の目的と効果

まず、質問の目的と効果について挙げてみました。

1、分からないことを明確にする(情報共有)

質問には、「分からないことを明確にする」という、情報収集の働きがあります。

「具体的にはどのようにしたらよいですか?」「いつまでに仕上げればいいですか?」「何か、ご要望はありますか?」のように、繰り返し問いかけることによって、不明確だった明確になり、相手と情報を共有することができます。

2、考えるきっかけをつくる(思考や気づきを促す)

質問には、「考えるきっかけを作る」という働きがあります。

「このプロジェクトを成功させるためには、どんな方法がいいと思う?」のように問いかけられると、その答えを考え始めるように、人は、「問いかけられると、その答えを探し始める」という特徴があります。つまり、質問は思考力を伸ばす働きがあります。

この働きを生かそうとするコミュニケーションがコーチングですね。

3、相手の思考をリードできる

質問には、「相手の思考をリードできる」という働きがあります。

たとえば、「なぜ、失敗したの?」という問いは、相手の思考を失敗に向けさせます。失敗に目が向くと嫌な体験を思い出し、モチベーションも下がってしまいがちです。

一方、同じことがらでも、「今回の失敗を次に生かすとしたら、何に生かせそう?」のような、未来対する肯定的な問いは、相手の思考を未来や問題解決に向けさせます。

4、その他の効果

その他、質問には次のような働きもありますが、これらは改めて、別の記事でご紹介したいと思います。

  • やわらかくお願いする―「席をもう少しつめていただけますか?」
  • 要求する―「明日の朝までにこの報告書を仕上げることはできますか?」
  • 思い込みをゆるめる―“いい大学を出なければ成功できない”――「大学と成功にはどんな関係性があるの?」「大学を出ていなくて成功している人、一人ぐらい知らない?」

最も簡単な質問のパターン

質問のパターンとして最もシンプルなのが、「5W1H」です。5W1Hとは……

  • いつ(when)
  • どこで(where)
  • だれが(who)
  • なにを(what)
  • なぜ(why)
  • どのように(how)

の頭文字をとったものです。

たとえば、プロジェクトの問題の解決策を考える場合は……

  • どのように(how)すれば解決できそう?
  • いつまで(when)にできそう?
  • どこで(where)始める?
  • メンバー(who)は誰にする?
  • 最初に何を(what)したらいいだろう?
  • なぜ(why)それが大事なのかな?

のように問いかけることで、その解決策が具体的になります。

質問をコミュニケーションで生かすポイント

質問をコミュニケーションに生かすためには、次のポイントがあります。

問題分析よりも解決志向で

問題分析(なぜ?)よりも、解決志向(どうすれば?)を意識しましょう。

「なぜ」「どうして」のような、問題を分析するような問いかけは、相手の意識を過去の問題点に向ける傾向があります。また、「なぜ?」「どうして?」としつこく質問すると、問い詰められているような印象を相手に抱かせ、言い訳を考えたくなる傾向があります。

一方、「どうすれば解決できると思う?」のように、未来に対する解決志向の問いは、意識を未来や、問題の解決に向けます。

質問は相手の思考の方向性を決めます。

急かさず時間をかける

質問は、急かさずゆっくり時間をかけましょう。なぜなら、人には、すぐに答えられる問いと、そうでないものがあるからです。

たとえば、「昨日の夜、何食べた?」のような、過去の経験を思い出すような問いは、すぐに答えられます。一方、「人生でもっとも大切なことは何ですか?」のような、普段あまり考えないような問いの答えは、比較的時間がかかります。

質問は思考力を育てます。急かさず時間をかけましょう。相手の成長を思いながら、あたたかい気持ちで接することも大切です。

まとめ

質問についてまとめてみました。いかがでしたか?

このように、質問力をコミュニケーションに生かすとさまざまな効果があり、相手に対する影響力もグンとあがります。お互いが分かり合い、相手の思考力を伸ばすためにも、質問を意識的に取り入れてみてはいかがでしょうか。

投稿者プロフィール

竹内義晴
竹内義晴NPO法人しごとのみらい理事長
1971年生まれ。新潟県妙高市出身。自動車会社勤務、プログラマーを経て、現在はNPO法人しごとのみらいを運営しながら、東京のIT企業サイボウズ株式会社でも働く複業家。「複業」「多拠点労働」「テレワーク」を実践している。専門は「コミュニケーション」と「チームワーク」。ITと人の心理に詳しいという異色の経歴を持つ。しごとのみらいでは「もっと『楽しく!』しごとをしよう」をテーマに、職場の人間関係やストレスを改善し、企業の生産性と労働者の幸福感を高めるための企業研修や講演、個人相談を行っている。サイボウズではチームワークあふれる会社を創るためのメソッド開発を行うほか、企業広報やブランディングに携わっている。趣味は仕事とドライブ。

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