コーチング研修やサービス導入が企業にもたらす効果と影響

コーチングとは、職場のコミュニケーションを改善し、自発的な人材を育てるためのコミュニケーションの手法です。

コーチングを企業に導入することで、どのような効果があるのでしょうか。

そこで、筆者がコーチングをしたり、研修をしたりしてきた中で感じる、研修やサービスを企業に導入した際の効果について、「実際どうなのか」という視点で見ていきます。

コーチングを導入する企業は増えているのか?

ところで、コーチングを導入している企業はどのような状況にあるのでしょうか。そこで、企業におけるコーチングの導入状況について調べてみました。

日本のデータではありませんが、CNN.co.jpのビジネス界に広がるコーチング 英企業の8割が導入によれば……

(CNN) ビル・クリントン元米大統領にも、米人気司会者のオプラ・ウィンフリーにもコーチがいた。スポーツ界のスター選手たちは言うまでもない。コーチングの効用は近年、ビジネス界でも広く認められ、多くの企業が導入している。

英国のリーダーシップ・マネジメント研究所(ILM)が最近、国内企業250社を対象に実施した調査によると、コーチングの手法を使っている、または使ったことがある企業は全体の80%を占め、さらに今後使う予定だと答えた企業も9%に上った。

出典:ビジネス界に広がるコーチング 英企業の8割が導入 | CNN.co.jp

としています。

では、日本国内ではどうなのでしょうか。残念なことに、コーチングを導入している企業の統計を知ることはできませんでした。一方、コーチングの資格の一つに、一般財団法人生涯学習開発財団認定コーチがありますが、資格を取っている人の数を知ることができました。

出典:資格取得者数データ|一般財団法人生涯学習開発財団認定コーチ資格をグラフ化

 このデータによれば、資格を取得している人が年々増えていることが分かります。その分、「コーチングを必要としている人は増えている」と言ってもいいでしょう。

コーチング研修やサービス導入が企業に与える効果と影響

では、研修やサービス導入が企業に与える効果や影響はどのようなものがあるのでしょうか。

日本経団連が毎年調査している、新卒採用に関するアンケート調査結果の2015年度版によれば、選考時に重視する要素は 12 年連続で「コミュニケーション能力」が第1位です。新卒採用者に限らず、職場におけるコミュニケーションの重要性については、あなたも実感されているのではないでしょうか。

上司の言葉のかけ方や、関わり方一つで、同僚や部下を動機づけることもできれば、やる気を削ぐこともできます。コーチングは、傾聴や質問力をはじめとした、一種のコミュニケーション能力です。そういう意味では、コーチングの能力が求められているのは間違いないといってもいいでしょう。コーチングについての詳しくは、コーチングとは何か?―定義と目的、必要な能力も併せてご覧ください。

一方、コミュニケーション能力はちょっと何かをやったからといって簡単に身に着くものではない……ということも事実としてお伝えしておかなければならないでしょう。実際、研修を1日受けたからといって、振る舞いはすぐに変わらないですよね。

また、以前、ITmediaエンタープライズに寄稿したなぜ上司は退職に追い込まれたのか――コーチングで起きた悲劇では、コーチングの導入によって、管理職層が退職に追い込まれたケースを紹介しました。

「研修をすれば、職場は変わるだろう」「コーチングを導入すれば、社員は自発的になるだろう」というスタンスだけでは、効果を感じるまでには、行きにくいかもしれません。

コーチング研修やサービスを効果的にするために

これまで、コーチングをしたり、研修をしたりしてきた中で、研修やサービスを効果的にするためには、いくつかのポイントがあるのではないかと思っています。

受ける対象者は管理職、リーダー層にする

せっかく研修をするなら、「できるだけ多くの人に参加させたい」というのが、心情かもしれません。けれども、世代や役割、立場によって、困っていることや悩んでいることは違います。

また、全員が知ると、「あっ、〇〇さんは今、コーチングをやろうとしているな」のように、不要な勘ぐりを誘うこともあります。

スポーツの世界で「コーチ」とは、指導する役割を持っている人たちを指すように、コーチングとは、管理職やリーダー層が、チームをまとめ、部下をよりよい姿にリードしていくためのあり方であり、コミュニケーション技術です。そのため、研修やサービスを受ける対象者は、管理職やリーダー層に絞った方がいいでしょう。

困っている人、学びたい人、受けたい人が学ぶ

コーチングとは、現状をよりよくするためのコミュニケーション技術です。「職場の人間関係や指導法に実際に困っている」「現状をよりよくしたい」「もっと成長したい」「結果を出したい」など、課題認識や成長意欲がある人が技術を身に付けたり、サービスを受けたりするのが最も効果的です。

逆に、問題がある人を、「あの人にコーチングを受けさせて、改善させよう」というスタンスでの研修や導入はあまりお勧めしません。なぜなら、全ての学習がそうであるように、無理やり「身に着けさせよう」としても、あまり身に着かないからです。

継続的な関わりを作る

スポーツ選手がある技術を身に付け、成績を上げていくためには、相応の期間が必要なように、人が技術を学び、身に付けていくためには、ある程度の期間が必要です。

そこで、継続的な関わりを作っていくことを勧めます。

例えば、コーチングの研修なら、「2日間で詰め込む」よりも、「半日ずつで4回に分ける」ほうが、継続的な関わりができますし、期間を空けることで実践したことをフィードバックできます。サービスを導入するなら、行動と振り返りの期間を合わせて、3カ月ぐらいは欲しいところです。

まとめ

自発的な部下を育て、働きやすい環境を作る上で、コーチングは非常に可能性があります。一方、技術を身に付けるまでには、相応のトレーニングも必要です。

もし、職場でコーチングを生かしたければ、最初は、コーチングのサービスを利用するのがよいのではないかと思います。経営者や管理職がプロからコーチング受けることで、コーチングの意味や効果を体感する。そうすると、コーチングが人材育成に与える影響が自身の体験として分かります。

その上で、社内に浸透させたければ、コーチングの研修を企画するとよいでしょう。

投稿者プロフィール

竹内義晴
竹内義晴NPO法人しごとのみらい理事長
1971年生まれ。新潟県妙高市出身。自動車会社勤務、プログラマーを経て、現在はNPO法人しごとのみらいを運営しながら、東京のIT企業サイボウズ株式会社でも働く複業家。「複業」「多拠点労働」「テレワーク」を実践している。専門は「コミュニケーション」と「チームワーク」。ITと人の心理に詳しいという異色の経歴を持つ。しごとのみらいでは「もっと『楽しく!』しごとをしよう」をテーマに、職場の人間関係やストレスを改善し、企業の生産性と労働者の幸福感を高めるための企業研修や講演、個人相談を行っている。サイボウズではチームワークあふれる会社を創るためのメソッド開発を行うほか、企業広報やブランディングに携わっている。趣味は仕事とドライブ。

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