メンタルヘルス

大切なのは職場で実践できること―メンタルヘルス研修二つのポイント

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20140906

ビジネスパーソンのストレスやメンタルヘルスが社会問題になっています。うつ、またはその可能性がある人は8人に1人とも言われており、その対策として厚生労働省は、2015年12月1日、メンタルヘルス対策の充実・強化などを目的として、従業員数50人以上の事業場にストレスチェックの実施を義務付ける法律(ストレスチェック義務化)を施行しました。

社員のメンタルヘルス対策への意識が高まる中、ストレスチェックだけではなく、社員教育の必要性を感じている人事や労務、研修担当の方も多いのではないでしょうか。

そこで、本記事では、社員のメンタルヘルス研修を実施する際に考慮すべきポイントと、職場で実践しやすいメンタルヘルス研修二つのポイントについて解説します。

メンタルヘルス対策とは「健やかに働ける職場作り」

職場のメンタルヘルス対策では、「健やかに働ける職場づくり」という認識を持つことが大切です。なぜなら、「職場づくり」という認識にすることによって、研修として取り組みやすくなるからです。

例えば、「メンタルヘルス」という言葉には、「健康や医療」というイメージがあります。そのため、保健師や医師、看護師などの専門家でなければ対応が難しいという印象を持つ方もいます。また、メンタルヘルスを「こころの問題」と捉えている方もいます。こころの問題を扱えるのは、臨床心理士や産業カウンセラーなどの専門家です。

確かに、ストレスが多い状態が続くと心や体の健康が損なわれる恐れがあります。心や体の健康を損なってしまった後なら、医療関係の専門家の関わりが必要かもしれません。

けれども、メンタルヘルスの課題を抱えるそもそもの原因は、職場の人間関係や過度なストレスです。これは医療の課題ではなく、職場の課題です。

このように、メンタルヘルス対策とは、「社員が健やかに働ける職場づくり」である。それは、職場で解決できるという認識を持つと、ハードルが下がって取り組みやすいテーマになります。

職場で実践できることを学ぶ

また、メンタルヘルス研修では、「職場で実践できる」ことが大切です。なぜなら、職場で実践できなければ、具体的な変化が起こらないからです。

例えば、あるIT企業では、メンタルヘルス不調を抱える社員が増え、困っていました。そこで、保健師の先生を招き、メンタルヘルスの不調を減らすための研修を行ったそうです。研修では、チェックシートに従ってストレスチェックを行い、「ストレスを感じていたら早く帰りましょう」「上司に相談しましょう」「必要があれば早めに医療機関を受診しましょう」という講義を受けたそうです。

しかし、研修受講者からは「それは分かるけれど、早く帰れないから困っているんじゃないか」「上司に相談しろと言っても、具体的にどうすればいいの?」という声が多く、人事の研修担当の方は対応に困ったそうです。

また、一般的なメンタルヘルス研修では、部下や同僚の「いつもとの違い」に気付くことが大切だと言われます。けれども、「気付く」のはなかなか難しく、仮に気付けても対応が難しい実情があります。

例えば、厚生労働省は、職場における心の健康づくり~労働者の心の健康の保持増進のための指針~の中で、「管理監督者による部下への接し方」として、「いつもと違う」部下に早く気付くことが大切だとしています。「いつもと違う」部下の様子として、次のような項目を挙げています。

  • 遅刻、早退、欠勤が増える
  • 休みの連絡がない(無断欠勤がある)
  • 残業、休日出勤が不釣合いに増える
  • 仕事の能率が悪くなる。思考力・判断力が低下する
  • 業務の結果がなかなかでてこない
  • 報告や相談、職場での会話がなくなる(あるいはその逆)
  • 表情に活気がなく、動作にも元気がない(あるいはその逆)
  • 不自然な言動が目立つ
  • ミスや事故が目立つ
  • 服装が乱れたり、衣服が不潔であったりする

出典:職場における心の健康づくり~労働者の心の健康の保持増進のための指針~|厚生労働省

しかし、特に下から4つの項目がそうであるように、この状況ではかなり深刻な状態であることが素人目に見ても分かります。どのように関わったらいいか分からず、不安です。

このように、医学的な方法や一般論では「職場で実践しにくい」という課題があります。

そこで、職場のメンタルヘルス研修では、社員が健やかに働ける職場を作るために、具体的な方法まで落とし込み、職場で実践できることが大切なのです。

職場で実践しやすいメンタルヘルス研修二つのポイント

職場で実践しやすいメンタルヘルス研修の内容には、大きく分けて二つのポイントがあります。

物事の捉え方の仕組みを知り、変化させる能力を養う

一つ目は、「物事の捉え方の仕組みを知り、変化させる能力を養う」ことです。

ある人にとってストレスと感じることが、他の人にとってはそれほどストレスに感じないことが実際にあるように、人によってストレスの感じ方は異なります

そこで、「なぜ、自分はストレスに感じるのか?」という物事の捉え方の仕組みを知り、そのパターンに気付くことができれば、ストレスを感じはじめたときに「これはいつものパターンだな」と気付くことができます。また、ストレスを感じたときに、捉え方を変化させる能力が身に着けられれば、ストレスコントロールがしやすくなります。

ちなみに、「物事の捉え方の仕組み」を専門用語では「表象システム」。物事の捉え方を変化させる能力を「リフレーミング」と言います。

また、数人のグループに分かれて、過去に体験したストレスを話し合うことによって、「自分では何とも感じないけれど、他の人はストレスだと感じるんだな」ということを知ることも、健やかに働ける職場づくりに効果的です。

職場でのコミュニケーション能力を養う

二つ目は、「職場でのコミュニケーション能力を養う」ことです。

一般的なメンタルヘルスの研修では、職場のコミュニケーションに目を向けられることはあまり多くありません。なぜなら、メンタルヘルスは個人の問題として捉えられているからです。

けれども、メンタルヘルスの課題を抱えるそもそもの原因は、職場の人間関係や過度なストレスにあります。それならば、職場でのコミュニケーション能力を養うことこそが、職場のメンタルヘルスの課題を根本から解決することにつながるのです。

例えば、部下や同僚が仕事でミスをしたときに、「なんで失敗したの?」と責め立てると、相手を追い込んでしまいますが、「この失敗を生かして、今度上手くできるようにするためにはどうすればいいと思う?」と問いかければ、相手の意識を未来の成功に向けることができます。

アドバイスするときもそうです。「あなたのここが悪いところだよ」と問題点を指摘すると相手はストレスを抱えますが、「ここを○○にするともっとよくなるよ」のように伝えると、未来をイメージさせつつ、よりよくするための具体的なアドバイスができます。

このように、同じことを伝えるにも、肯定的な伝え方にすることでストレスを成長の機会に変えることができます。

また、仕事をしていれば、誰もが多かれ少なかれ、何らかのストレスを抱えるものです。カウンセラーは、悩みを抱えた人の話を傾聴することからはじめるように、部下や同僚が何からのストレスを抱えていたときの対応の基本は傾聴です。傾聴力を養い、日ごろから話を聞くことができれば、部下や同僚が過度なストレスを抱えることを未然に防ぐことができ、ストレスチェックにひっかかること自体がなくなります。

とはいえ、傾聴技法の基本はとてもシンプルです。話を聞く効果を最大化する2つの傾聴技法と6つのポイントもあわせてご覧ください。

職場で実践しやすい仕組みも作る

また、日ごろから職場で実践しやすい仕組みづくりも大切なポイントです。なぜなら、日ごろから実践できる仕組みがあることによって、部下や同僚がストレスを抱えたときのアラームを鳴らしやすくなり、早め早めの対応が可能になるからです。

例えば、筆者は管理職時代、毎日書く業務報告書に、「今日の天気」という欄を設け、部下にその日の気分を「晴れ」「曇り」「雨」で表現してもらうようにしていました。「ストレスを抱えている」とは相談しづらくても、業務報告書に「曇りときどき雨」のように天気で表現することなら気軽に書けます。「曇りときどき雨」「曇りのち雨」「雨」「大雨」のようなときは、こちらから声をかけて話を聞くようにしていました。

また、月1回、30分間、ざっくばらんに何でも話していい時間を作っていました。毎月定期的に話すので、部下や同僚の変化を感じ取ることができました。

このように、相手の状況を都度観察して気付くのは難しくても、仕組み化することで簡単になり、職場で実践しやすくなります。筆者が関わったメンタルヘルス研修では、このような実践的な話がとても喜ばれました。

まとめ

職場で実践できるメンタルヘルス研修の内容についてお話しました。

ビジネスパーソンのメンタルヘルスの根本原因は、ストレスに対する物事の捉え方や、職場の人間関係や過度なストレスにあります。それならば、根本原因に対してアプローチしてはどうでしょうか。

ここに紹介した内容なら、医学的なことや一般論よりも簡単で、職場で実践できるので、変化を肌で感じられるでしょう。

職場における本当のメンタルヘルス対策とは、「社員が健やかに働ける職場づくり」なのです。

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