メンタルヘルス

今、本当に必要な2つの「職場のメンタルヘルス対策」

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
stress

はじめに

近年になって、職場のメンタルヘルス対策の必要性が叫ばれています。

2015年11月、厚生労働省は「ストレスチェック実施プログラム」の配布を無料ではじめました。それだけ、国としても危機感を持っている現われなのかもしれません。

私たちが毎日を健康で、楽しく、やりがいを持って働いていく上で、メンタルヘルスの大切さについては誰もが認めるところでしょう。具体的に何を、どのようにすれば、職場からメンタルヘルスの不調者を出さなくできるのでしょうか。

この記事は、職場のメンタルヘルスを改善していくための方法について考えます。

筆者のメンタルヘルス不調体験

本題に入る前に、筆者のメンタルヘルス不調体験についてお話させてください。筆者は2003年~2005年ごろにかけてメンタル的な不調を抱いた経験があります。

当時、IT業界でプログラマー、システムエンジニアの仕事をしていました。エンジニアの仕事は大好きでしたが、年齢を重ねるに連れてマネジメント的な仕事を増えてきました。そこで、「エンジニアの仕事に集中したい」と、転職しました。

転職後、すぐにメンタルヘルスの不調を感じ始めました。その原因を一言で言えば、「職場の雰囲気や人間関係」でした。次のような環境でした。

  • トップダウンで威圧的なマネジメント
  • 品質や納期など、プレッシャーが多い
  • ミスが許されない
  • 残業が多い

職場全体がギスギスしているため、会話もあまりありません。また、ミスをすると責められるため、恐れの中で仕事をしていました。

朝、仕事に行くのが毎日本当に憂鬱で、胃が痛み、好きだった仕事も楽しくなくなるまで、それほど多くの時間は必要ありませんでした。夜、寝ていると自然と涙が出てくるような、過度なストレスを抱えた状況でした。胃の痛みを和らげるために通院しましたが、もし、心療内科を受診していたら、うつと診断されていたかもしれません。

このような体験を通じて、分かったことがあります。

ビジネスパーソンが置かれているメンタルヘルスの現状

さて、最初に、ビジネスパーソンが置かれている現状について見てみましょう。

厚生労働省の平成25年「労働安全衛生調査」(実態調査)によれば、メンタルヘルス不調により連続1か月以上休業又は退職した労働者の状況は、

過去1年間にメンタルヘルス不調により連続1か月以上休業又は退職した労働者がいる事業所の割合は 10.0%[24 年調査 8.1%]で 24 年調査より上昇している。

出典:平成25年 労働安全衛生調査(実態調査)結果の概要 | 厚生労働省

とのことです。メンタルヘルスの不調者が増加していることがうかがえます。

また、各企業のメンタルヘルス対策への取組状況については、

メンタルヘルス対策に取り組んでいる事業所の割合は 60.7%[23 年調査 43.6%、24 年調査47.2%]で 24 年調査より上昇し、事業所規模が大きくなるほど高く、300 人以上のすべての規模で9 割を超えている。取組内容(複数回答)をみると、「労働者への教育研修・情報提供(※12)」(46.0%)が最も多く、次いで「事業所内での相談体制の整備」(41.8%)、「管理監督者への教育研修・情報提供」(37.9%)となっている。

出典:平成25年 労働安全衛生調査(実態調査)結果の概要 | 厚生労働省

とのことで、事業所規模が大きいところでは、何かしらの対策をしている企業が9割を超えています。

一方、メンタルヘルス対策に取り組んでいない企業の理由や、今後の取組予定については、

メンタルヘルス対策に取り組んでいない理由(複数回答)については、「該当する労働者がいない」が 39.0%と最も多く、次いで「取り組み方が分からない」が 25.3%、「必要性を感じない」が 21.8%となっている。今後の取組予定としては、「予定がある」は 1.7%、「検討中」が 19.9%、「予定はない」が 72.0%となっている。(

出典:平成25年 労働安全衛生調査(実態調査)結果の概要 | 厚生労働省

とのことです。

そもそも、メンタルヘルスとは?

「メンタルヘルス」という言葉自体は、近年よく聞きますが、そもそも、メンタルヘルスの定義はどのようなものなのでしょうか。Wikipediaによれば、

メンタルヘルス(英: mental health)とは、精神面における健康のことである。精神的健康、心の健康、精神保健、精神衛生などと称され、主に精神的な疲労、ストレス、悩みなどの軽減や緩和とそれへのサポート、メンタルヘルス対策、あるいは精神保健医療のように精神障害の予防と回復を目的とした場面で使われる。

出典:メンタルヘルス | Wikipedia

一言で言えば、「心の健康」と言っていいでしょう。

メンタルヘルス不調者が現れる原因

では、なぜ職場から、メンタルヘルス不調者が出てしまうのでしょうか。

「メンタルヘルス不調者が現れる原因」について、独立行政法人 労働政策研究・研修機構が2012年に調査した職場におけるメンタルヘルス対策に関する調査によれば、

メンタルヘルス不調者が現れる原因について、事業所がどのように認識しているか聞いたところ(3 位までの複数回答集計)、「本人の性格の問題」が 67.7%と 7 割弱を占めてトップ、次いで「職場の人間関係」(58.4%)、「仕事量・負荷の増大」(38.2%)、「仕事の責任の増大」(31.7%)、「上司・部下のコミュニケーション不足」(29.1%)、「家庭の問題」(29.1%)、「成果がより求められることによる競争過多」(12.6%)などの順となっている

出典:職場におけるメンタルヘルス対策に関する調査 |独立行政法人 労働政策研究・研修機構

としています。「職場の人間関係」は、コミュニケーションの問題と言い換えることができます。また、「仕事量・負荷の増大」「仕事の責任の増大」については、職場の中によりよいコミュニケーション(ざっくばらんに相談しあえる環境)があれば、一人で抱えなくても済みそうです。

つまり、メンタルヘルス不調者が現れる原因を大きくまとめると、「職場の人間関係」と「本人の性格(物事の捉え方)の問題」とすることができます。

職場のメンタルヘルス対策をする上で大切なこと

心の”健康”という言葉がそうであるように、メンタルヘルスが不調だと、「病気」というイメージがあるかもしれません。実際、精神的疾患のようなイメージを持っている人も少なくないでしょう。

体の健康は、定期的にチェックすることによって予防できます。体調が悪ければ、薬を飲めば治ります。

一方、心の健康は、定期的なチェックで状況は分かりますが、体と異なり、薬では根本的な解決にはなりません。なぜなら、メンタルヘルス不調のそもそもの原因は、「人間関係のストレス」や「物事のネガティブな捉え方」にあるからです。

職場のメンタルヘルス対策でもっとも大切なのは、「根本原因を解決すること」です。

今、本当に必要な2つの「職場のメンタルヘルス対策」

職場からメンタルヘルス不調者を出さないためには、大きく分けると2つの対策があります。

職場の人間関係改善(コミュニケーション力を上げる)

一つ目の対策は、職場の人間関係の改善です。

人間関係を改善するためには、よりよいコミュニケーションスキルが必要です。なぜなら、同じ内容でも、伝え方によって、相手の捉え方はネガティブにも、ポジティブにもなるからです。

たとえば、部下が仕事でミスを犯したときに、「何で失敗したんだ。それは、あなたにスキルがないからだぞ」と言われるのと、「この経験から学んだことは何?今度上手くいくようにするためには、どうしたらいいだろう?」と言われるのでは、伝わり方は全く違うでしょう。

また、つらい状況に置かれているときに大切なのは、その気持ちを分かってくれる、信頼できる人の存在です。

特に、管理職層のコミュニケーションスキルは、よりよい職場環境を作っていく上で非常に重要です。研修等が必要になるでしょう。

社員の「物事の捉え方」の改善

二つ目の対策は、社員一人ひとりの「物事の捉え方」の改善です。

物事の捉え方を変えるためには、「なぜ、人はそのように考えるのか」という、心理学的な知識を身につけ、物事の捉え方をよりよい方向へ切り替えていく方法を知る必要があります。

たとえば、仕事でミスをして上司に叱られたときに、「あ~あ、何でいつもこうなんだろう?私ってダメだなぁ」と落ち込む人もいれば、最初は落ち込みながらも「上司はきっと、私のことを思って叱ってくれたに違いない。今度、もっと上手くできるようにするためにはどうすればいいだろう?」と考える人もいます。このように、同じ体験でも、物事の捉え方は人によって異なります。

起こった出来事は変えることができませんが、解釈(捉え方)なら変えることができます。思考によって感情は変化するため、物事を柔軟に捉える能力はメンタルヘルス対策に役立ちます。

「物事の捉え方」は思考習慣なので、その構造を知り、ちょっとしたコツをトレーニングすれば身につきます。@IT自分戦略研究所に寄稿した仕事に「やりがい」がなくていいの?――固定観念の「プログラムバグ」を修正しようも参考にしてください。

ストレスを抱えていた筆者はどうなったか

冒頭に筆者のメンタルヘルス不調体験をお話しましたが、筆者は、抱えていた問題を解決するために心理学やコミュニケーションスキルを学びました。

物事の捉え方を学ぶことによって、物事を自然と前向きに捉えられるようになりました。その結果、不調も自然と回復し、前向きに仕事に取り組めるようになりました。

また、職場の同僚ともよりよい関係を作ることができるようになりました。その後、管理職になりましたが、不調を訴える部下との関わり方が分かるようになり、職場全体の雰囲気を「つらさ」から「楽しさ」に変えることができました。

職場のコミュニケーションや物事の捉え方の重要性に気付いた今、エンジニアを離れ、人材育成の仕事に携わっています。今振り返ると、とても貴重な経験ができて本当によかったと思っています。

まとめ

職場のメンタルヘルス対策に対する概論をまとめました。

メンタルヘルス対策というと、なんとなく「病気」というイメージがあるために、「個人の問題」だと思いがちです。そのため、「関わりづらいもの」という印象があるかもしれません。

また、その対策も、「何をやったらいいのか分からない」というのが、正直なところではないでしょうか。思いつくことがあるとしたら、社員の「ストレスチェックをする」「ストレスを減らす」「残業を減らす」「相談窓口を設ける」のようなことでしょうか。

しかし、ストレスチェックでストレスがあることが分かっても、どのようにしたらストレスを減らせるのかよく分かりませんし、残業時間が減ったからと言って、ストレスがなくなるかというと、そういうものでもないでしょう。

職場のメンタルヘルス対策では、不調を訴えている社員の「結果」に目を向けることも大切ですが、それをきっかけに「原因」にも目を向けてください。そうすれば、問題の根っこには「人間関係」や「物事の捉え方」にあることが分かります。

根本原因が分かれば、社員がメンタルヘルス不調に「なった後」ではなく、「なる前」の対応ができるでしょう。

小冊子「仕事のやる気とメンタルケア」

NPO法人しごとのみらいでは、2011年1月~2月にかけて、「仕事のやる気とメンタルヘルスの実態調査」を行いました。

アンケート結果を元に、無料小冊子「仕事のやる気とメンタルケア」―ストレス社会を、充実した気持ちで働くために―を作成いたしました。

「どのようにすれば、ストレスコントロールができるのか」
「どのようにすれば、人間関係のよい職場になるのか」
「どのようにすれば、モチベーションを維持できるのか」
「どのようにすれば、チームが活発になるのか」

などの視点で、現在、労働者や組織が抱えているさまざま問題を解決するためのヒントが書かれています。

小冊子をダウンロードする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

スポンサーリンク